≪ジェイドの場合≫
「なりません。」
嫋やかな外見とは裏腹に力強く断言したのは、私の上司・・・・の付き人である。
あまりにきっぱり切り捨てられたので、思わず内心ムッとしてしまい、それを誤魔化すように眼鏡のブリッジを押し上げた。
「何が問題なのです? 迅速に行動する為には悪い案ではないでしょう。」
「そもそも何が問題なのかも分かっていない時点で、良くありません。まして、それが悪い案ではない等と・・・・・。」
ほぅ、と困ったように溜息を吐く姿を黙って見つめ、先を促す。
周囲の人間はそれに見惚れているようだが、そんなにいいものか、これは。
「よろしいですか? 確かに陛下は、フリングス少将や貴方がた密命を拝する方々に『疾く行動せよ』と仰りました。ですがそれは、和平の使者として導師をダアトから誘拐するほどではありません。」
「誘拐などと人聞きの悪い・・・」
「ダアトに潜り込んで、直接導師と交渉して黙って他国に連れてくる事のどこが誘拐ではないと?」
「本人は了承しています。」
カーティス大佐、と窘める口調はどこかの誰かに似ている。
それは誰だったか。
「ダアトはマルクトやキムラスカ程、絶対王政ではないのです。ましてや現導師は幼く、その執務は大詠師を中心とする側近たちがそのほとんどを担っています。彼らの説得無しに連れ出せば、彼らの軍隊が我々を襲ってもおかしくはありません。」
「国境を越えて戦いを仕掛けてくるとでも? 馬鹿馬鹿しい!」
「・・・・・それは本当に馬鹿馬鹿しい事でしょうか? 彼らには導師を『救出』するという大義名分があります。」
「だから何度も言いますが『誘拐』ではないと・・・・!」
「そう思っているのは貴方と幼い導師だけでしょうね。」
遠慮がちに苦笑した様は、まるで屁理屈をこねる子供を言い聞かせるような人間の顔だ。
・・・・・この私が子供と一緒だと?
「ではカーティス大佐、考えてみて下さい。ダアトとキムラスカが敵対していたとしましょう。二国は長い間争っていましたが、今回ダアトは長年の因縁に終止符を打つべくキムラスカに和平の使者を送る事にしました。和平の本気だと見せるために、わざわざ第三国のマルクト皇帝を許可無しに連れ出してまで。・・・・・・さぁ、カーティス大佐。貴方はどうします?」
「あのバカ皇帝を連れ戻すに決まっています。」
「本人はそれを了承しているのに?」
「了承していたとしても、一人で行くなど馬鹿げている。あの男の背には、このマルクトが背負われているんです。もしその身に何かがあれば、後継者もいないマルクトでは一大事です。」
「そう、その通りです。・・・・・・・・・ほら、ね? 自国に置き換えてみるとカーティス大佐は陛下を連れ戻そうとするでしょう? 同じようにきっとダアトだって連れ戻そうとするでしょうね。」
・・・・・・・。
よくできましたとばかりに手を叩いて花のように笑う男に、言い負かされた悔しさを何とか飲み込んだ。
「それと、親書は出来上がってから出発しましょうね?」
旅券もちゃんと取得してからですよ? と続ける・・・・・・・・・・この男、何でもお見通しとでも言うつもりか!
親書も旅券も後から別の場所で受け取ればいいことだろうに。
「旅にアクシデントは付きものです。親書が無い和平の使者など、ただの持ち場を離れた軍隊でしかありません。それに、例え貴方がそう命令を下そうとも、最終的な判断はフリングス少将がなさいます。よろしいですね?」
・・・・・・。
よろしいも何も・・・・。
「上官の命令に従うのが当前でしょう。」
「そうですね!」
ふふふっと嬉しそうに笑う男は、事もあろうに私の頭に手を乗せ撫で始めたではないか!?
ありえない、何をする!
「良く出来ました、ジェイド・カーティス大佐。」
――――良く出来たわね、ジェイド。
男の声と、在りし日の声が重なる。
・・・・・・あぁ、誰かに似ていると思ったら・・・・・・そうか、あの人か。(・・・・先生。)
だから私はこの男が苦手なんだ。(失った物を、罪を、思い出すから。)
≪おまけ≫
よーし、これでゲーム本編は回避できただろ!
というか嫌味にキレがない、しおらしいジェイドって可愛いけどキモいな!
嫌そうな顔をしてるんだったら、さっさと俺の手を振り払って逃げればいいのに、それをしないんだぜ?
これが俗に言うツンデレか!
現代人にとってツンデレは創作での話だったら余裕だけど、実際付き合う事になったら特殊な性癖でもない限り・・・・いやむしろツンデレを凌ぐド根性でも無ければ付き合ってられない。
しかもツンデレは普通美少女のもんだろ!? 美少年でも可!
ジェイドお前・・・・・美形かもしれないが、いい年したおっさんだからな?
な??
だからさぁ・・・・・ちょっと思いつきの嫌がらせで始めた頭ナデナデ、どこでやめようかな!?
止めようとすると何故睨む!?
意味わかんねぇ!
だーれーかヘルプミー!
・・・・・・・・あ、幼馴染皇帝発見!
ちょっ、こら待て、世界が破滅しそうな顔でドン引きしないで助けろ馬鹿やろぉおおおお!!!
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