Wonderful Heaven Extra : 10


 ウチの弟は夜になるとめっさ可愛いんです!
 もうもうもうっ、何なの超可愛い!!
 俺より年下の癖に、いつもは凛として頼りがいのある弟様が、一緒に眠る時だけ甘えてくれるんだぜー!
 弟様どころか弟ちゃまでよろしい。ひよこちゃまでも可!

「兄上・・・」
「どうした、ルシルフル」

 不安そうな顔を俺に抱きつくことで隠すとは・・・・さすが弟ちゃま!
 俺のツボを良く心得てらっしゃる!
 肩にぐりぐりと頭を寄せられ、髪の毛がくすぐったい。
 しかし本当にどうしたー?
 すっごい落ち込んでるような気がするんだが。
 なんかあったのかなぁ・・・。
 お兄ちゃんこんなんだけど、相談してくれれば力になるよ?
 実際力になれるかどうかなんてわかんないけどさ。
 それともあれか?
 こういう時は良く眠れるように子守唄でも歌うべき?
 でも子守唄なんて俺知らないんだよねー。
 ねーんねーんころりよ、おころりよ〜・・・・ぐらいしか知らん。
 じゃあやっぱりあれか?
 次に出版予定の童話を聞かせてやるとかか。
 最初は小遣い稼ぎが目的だったのに、怖いくらい入って来るお金に困っちゃったんだよね。置き場所ないし。
 キムラスカってそもそも銀行ってあるのか? それともファブレの金庫に保管? 良くわかんなかったから、父上に全部まるっと投げといた。これで一安心だね!
 それにしても俺に『幻想御手』なんて二つ名が付いたとか言われた時、それどんなレベルアッパー!? って驚愕したけど、『幻想御手』と書いてストーリーテラーと読むのには、思わず納得しちまった。
 この世界の人にとっちゃ、現代でも語り継がれてる童話は革命的だよねー。
 とりあえず前は人魚姫だったし、今度はラプンツェルとかにしようかな。
 あ、赤ずきんとかでもいいか。
 でも、俺と同じでルシルフルってハッピーエンド好きなんだよね。
 人魚姫って結局泡になっちゃうから、ルシルフルは好きじゃないと思ったから事前に話さなかったんだけど。
 出版された後も、「結局王子と結ばれずに消えてしまったんですね・・・・」って納得し辛そうに言われちゃったもんな。
 でもあれってそういう物語だから!

 うーん、さて本当にどうしよう?

「・・・・こんな俺じゃあんまり力になれないかもしれないけれど、何かあったなら言って欲しい。俺が出来ることなら必ず願いを叶えてあげる。」

 まずは声を掛けとくか。
 俺が勝手に手を出しちゃいけない問題かもしれないし。

「・・・・兄上がそう仰って下さる、それだけで充分です。」

 そうか? 謙虚だなぁ!

「兄上も、」
「ん?」
「兄上も何かあったら俺に教えて下さい。」
「・・・・・・・・あぁ。」

 ちょ、お前ってなんて良い子なの!?
 何かに悩んでるっぽいのに俺を気に掛けてくれるとか・・・っ、できた弟に俺は感動です!
 思わず返事に詰まっちゃっただろ!?
 ・・・・わかったよ、何かあったら頼りにさせてもらう。
 というか、もう既に頼りまくりだと思うけどね!!
 兄の威厳が地に落ちまくりだと思うんだ!
 むしろマリアナ海溝なみ?

「兄上」
「ん?」
「・・・・・何か欲しい物はありますか?」
「え?」
「何かして欲しい事でもいいんです。」

 どしたー、突然?

「いいから、答えて下さい!」

 はいっ、すいません!
 あちゃー、怒られちゃった。
 でも欲しい物ねぇ、何かあったかな。
 うーむ。
 ・・・・・んー。
 ・・・・・・・・・・・・んーーーーーーーーー、あ。

「平和を。」

 ルシルフルの手を握った時に感じた、何箇所もある硬い所。
 立派な剣ダコだ。
 これを見た瞬間、俺の口はそう答えてたんだ。

「誰もが笑っていられるように。誰かがこれ以上傷つくことが無いように。」

 だって平和ならルシルフルがこれ以上傷付かずにすむだろ?
 まあでも、魔物が溢れるこの世界では途方も無いことだと思うけどさ。
 でもアリエッタという事例もあるんだぜ。
 世界は人間だけの物じゃないんだ、魔物だって生きてる。
 魔物は怖いけど、でも共存できればいいよな!

「これは偽善かもしれないけれど、ね・・・・」

 だって一見カッコイイこと言ってる俺だけど、ぶっちゃけ俺が村人A以下の戦闘能力しかなくて怖いからなんだぜ!
 威張れる事じゃないね!

「いいえ!」

 うおっ、元気の良い返事だな。

「・・・・いいえ、兄上。俺もそれを願っています。」

 ・・・・・・ルシルフル、お前って本当に良い奴だ。
 だからさ、時々怖くなる。
 だってお前は逆行ルークだろう。
 この後の出来事を知っているからこそ、無茶をしそうで俺は怖い。
 ルシルフル、

「・・・・・・・・・死ぬな。」

 死んでくれるな。
 この異世界で、お前が居てくれたからこそ、俺はこんな快適に暮らせてるんだ。
 みんなみんな、お前のおかげ。
 お前は俺の恩人と言っても良い。
 だから恩人のお前が死ぬなんて、俺には耐えられない。
 この繋がった手から、俺の願いが届けば良い。

「死にません。約束します。」

 絶対だぞ?

「兄上が天寿と全うして幸せになるまで、俺は死にません。」

 天寿、ねぇ。
 レプリカの寿命は短いんだけど、そういや、俺って死んだらどうなるんだろうな?
 今度こそ本当にお陀仏?
 それとも元の世界に戻れるのか?
 元の世界に戻れるとして、事故にあった後どうなっているのか?
 俺は既に愛着を感じているこの世界と、無事別れを告げられることが出来るのか?
 俺を慕ってくれるルシルフルや、父上や母上たちはどうするんだろう?

 ・・・・・・・。
 ま、その時になんないと分かんないよな!
 まだ時間はあると思うし、うじうじ考え込むのは俺の趣味じゃない。

「約束です。」

 おー!
 これで約束は反故される為にあるとかほざきやがったら、俺泣くからな!?
 絶対守れよ!


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