Wonderful Heaven Extra : 07


 目を覚ましたらピンクとフリルの不思議世界(ワンダーランド)。
 ・・・・・・え、どゆこと?
 説明プリーズ!

「兄上、お目覚めですか?」

 わ、ルシルフル!

「・・・・ルシルフルも?」
「えぇ、気づいたら『ここ』に飛ばされていました。」

 兄上と離れ離れにならなくて良かったです、と言ってくれるルシルフルは、首元の襟を緩めてリラックスムード。
 この子成長する毎に無駄にエロくなってく気がするんだけど、それってどうなの?
 やっぱり団長の名前効果?
 あの人も上半身裸に黒のファー付きコート羽織ってたしな!
 ゲーム本編でも『ルーク』は似た様なコスチューム着てたし、・・・・えーと、何て名前だっけかな?
 あ、ワイルドセイバーだ!
 本人もあの衣装着てたから、黒のファーコートを上半身裸で着てても今更どうとも思わないんだろうなぁ。

 お兄ちゃんとしては物凄く心配だよ、ルシルフル!

 変な、って言っちゃ悪いかもしれないけど、一応ファブレって公爵家だからさ。
 家名やお金、外見につられて悪女の餌食にならないでね!
 そんな事になったら、お兄ちゃん小心者だけど頑張って説得するから!
 戦うのは怖いけど、お兄ちゃん弟の為なら頑張れる!!

「・・・兄上?」

 おっと、思考が飛んでたみたい。
 ベッド脇に腰掛けたルシルフルが、心配そうに俺を覗き込んできた。
 だから邪魔くさそうに髪を掻きあげる仕草がエロっちぃんだって!
 俺相手だから良いものの、女の子相手じゃ一発で落ちてるかもしれないぞ!
 ・・・・・クソッ、俺にも少しそのエロさを分けて欲しいぜ。
 そしたら女の子が寄ってくるかもしれないし。
 ルークのレプリカになってからも、なーんでか女の子と係わり合いになる事が少ないんだよなー。
 俺ってやっぱりヘタレな雰囲気が滲み出てる?
 ヘタレはアウト・オブ・眼中なのかな。
 体調が良い時だけ出られる貴族のパーティーでも、遠巻きにされるし。
 うぅっ、俺って惨め!
 その内泣くぞ泣いちゃうぞ絶対泣くからな!?
 ・・・・・・・・・・・・・はぁ。
 俺、こんなんで嫁さん貰えるのかな?

「兄上、大丈夫ですよ。」

 するりと優しく頬を撫でられた。

「不安そうな顔をしてらっしゃいました。」

 やさぐれる俺をにこりと笑って慰めてくれる弟・・・・。
 うわぁあああん、お前ってなんて良い子なのーーー!!!!
 思わず頬を撫でる手に擦り寄っちゃいました。
 ルシルフルはそれに小さく笑って、鬱陶しい髪まで梳いてくれるし。
 うあー、気持ち良い。
 気分がふあふあになる。
 やっぱり遺伝だな、パパンの特技ナデポはしっかり弟様に継がれてたみたいだ。
 年々攻撃力が増してきてるし、パパンの破壊力まで後もうちょいってとこだな!

「それでルシルフル、ここは一体・・・・」

 いい加減本題に戻ろう。
 ここ、どこ?

「ローレライに確認しました。ここは『異世界』です。」

 わーお、まさかの多重トリップ!?

「この世界は、兄上が女性であったなら。兄上がキムラスカではなくマルクトで育ったなら。兄上がマルクトでフリングス将軍に育てられたなら・・・・そんなもしもの世界だそうです。」

 え゛。
 ・・・・・・・・・一応、アビスの世界ではあるのか。
 しかし俺が女の世界ねぇ。
 いや、俺が女にっていうよりか、『ルーク』という存在が女だったという世界だな。
 さすがにTSは俺のキャパを超える。
 どうなるか想像もつかん!

「この部屋は、そのルークの部屋です。」

 あぁ、だからこんなピンクとフリルの不思議世界(ワンダーランド)なわけね。
 一瞬幻覚かと思ったよ!
 しかも今気づいたけど、可愛らしく随所にぬいぐるみが置いてあるし。
 まさに女の子って感じ。
 姉貴はがさつだったし、妹もこんな少女趣味じゃなかったからなー。
 何だか新鮮だ。男としては居た堪れないけど。

「そもそも、どうして俺たちがここに?」
「兄上、覚えてらっしゃいませんか? ローレライと兄上が・・・・」

 あぁ、無事に世界を救えた俺は『ルルー』として生きていく事を決意したんだけどねぇ・・・。
 何せ現実世界では俺の身体もう無いからなー。灰になってるし。
 でもあのローレライでさえ俺が現実世界の住人だって知らないんだぜ?
 心と記憶を勝手に読んだら絶交するって言ってあるし、まぁ大丈夫だろ。
 ・・・ってそんな事はいいんだ。
 ローレライは、俺の事も我が子として可愛がってくれてるんだな!
 体調はあんまり良くないけど、第七音素使ってそんな簡単に乖離しなくなったし。
 いつも俺の事気遣って加護とか補助とか、いろいろしてくれてるし。

 そんなローレライですが、俺に対してある要望が出されたのでした!
 それがローレライの事を『お父様』と呼ぶ事。
 夢の中でもいいから一週間に一度は必ず顔を見せる事。(実際に会えるなら尚良し!)
 それが俺に加護とかくれる対価だったわけだ。
 俺は即行OKしましたよ、勿論!
 それでこんな物騒なアビス界を悠々と生きられるなら、安いもんだよね!
 でもその条件が出された時、お兄様も弟様も怖かったんだよねー。何でだろ?

 で、俺はお父様といつもの如くじゃれあってた訳だ。
 それでふとした拍子にお父様の第七音素を共鳴しちゃって、ここに飛ばされた、と。
 ついでにその場にいたルシルフルも巻き込まれた・・・のか。
 うわっ、災難だったなルシルフル!
 俺はお前が居てくれて心強いけど。

「・・・・思い出した。」
「頻りにローレライが謝って来てます。」

 五月蝿い、と眉を顰め頭を押さえるルシルフルに、俺は苦笑した。
 ローレライは俺と、本当に必要な時しかチャネリングはしない。
 俺の身体は相変わらず軟弱だからなー。
 乖離に危険性が消えたとはいえ、チャネリングすると頭ガンガンするんだわ。
 それを知ってるから、俺への伝言も全部ルシルフルを通して伝えられる。

「お父様に伝えて、俺は大丈夫って。それよりも還れるの?」
「・・・・兄上の体調が整い次第、帰還させるそうです。長い時間『この世界』に留まれば、俺たちにとっても、『この世界』のルークにとってもあまり良い影響を与えないだろうって事らしいです。『この世界』のローレライには、俺を通してローレライが滞在許可を貰いましたので大丈夫です。」
「そう。じゃ、それまでこの世界を楽しもうか!」
「それは結構ですが、最優先事項は体調回復ですからね?」

 わかってるよ、ルシルフル!
 で、初めて会った『この世界』のルークは、まさにお姫様って感じだった。
 うんうん、可愛い子見ると幸せだよね。
 可愛いはジャスティス! これ常識。

「ルーク、こちらへ。」

 手招きすれば、眼を輝かせながら近寄ってくれる。
 ここ最近この子の髪を結い上げるのが日課です。
 こうしてると、妹の長い髪を編み上げていたのが懐かしい。

「ルルーお兄さん、器用だね!」
「そうかな。まぁ、俺も長い髪だしね」

 自分の髪を結うなんて、一つに纏める以外あんまりないけど。

「はい、出来た。」
「わぁっ! ルルーお兄さん、凄い! 可愛い! ありがとう!」

 そこまで喜んでくれると俺も嬉しいよ。
 自分の髪でまさかセーラー○ーンうさぎちゃん仕様なお団子なんて出来ないからさ、こちらとしても楽しかったです!

「良く似合ってますよ、ルーク」

 にこにこ笑いながらお姫様を褒めてるのは、養父であるアスランさん。
 いやー、まさかこの人がルークの養父とは!
 ゲーム本編とはかけ離れてていいんじゃない?
 常識あるいい人だよ、うん。ちょっと腹黒い感じがしなくもないけど。
 初めて会った時はさすがに緊張した。
 俺もルシルフルも、キムラスカ王族の特徴隠してなかったし。でもこのままこの家に滞在するのも悪いなーと思ってたら、ここに居なきゃいけない理由もくれたし。
 やっぱりマルクトでキムラスカの王族の特徴持つ人間が、宿にいたら何て思われるかわからないもんね。
 実際譜術で姿を変えられんだけど、譜術帝国でそれがバレたら騒動がおきそうだし。
 うん、彼の提案は正直ありがたかった!
 思わず三つ指突いてお辞儀してしまった。
 本当は土下座みたく深くお辞儀したかったんだけど、上半身だけ起こした状態で、しかも彼らの方に向かって身体を捻りながら土下座できるほど、俺の身体とんでも設計してないし、残念ながら柔らかくもない。
 ごめん、アスランさん!

 そんなこんなで日々が過ぎ去り。

「・・・・・還る、ですか?」
「はい。今までお世話になりました。」

 体調が安定したので、そろそろ戻っておいでコールがルシルフルにかかりました!
 あまりに馴染んでしまったので、突然の別れにアスランさんも困惑しているみたい。
 いやー、突然来て突然還るなんて、本当申し訳ない!
 でもお父様がいい加減痺れを切らしたみたいだから還らないと。
 パパンとママン、お兄様の事もどうなってるか心配だし。

「お兄さんたち、帰っちゃうって本当!?」

 パタパタと息を弾ませながら駆け寄ってくるルーク。
 うん、今日も可愛いな!

「ルーク。あぁ、俺たちはもう還らなければ。」

 うるうる涙を浮かべるけど、ぎゅっとスカートを握って耐える可愛いお姫様。ごめんね。
 ありがとう、と抱きしめれば、ギュッと抱きしめ返してくれた。
 さようならの時間だ。

「・・・・結局、貴方がたの正体はわからないままでした。その姿からしてある程度予測は付いていましたが、ルシルフルという名前も、ルルーという名前もどこにもありませんでした。これは今更過ぎる質問かもしれませんが、・・・・・貴方がたは一体何者です?」

 んー・・・、どこの世界もジェイドはジェイドか。
 でも『この世界』に俺たちの名前が無いのは当たり前なんだな!
 そもそも世界自体が違う訳だし。

「・・・・時間だ。兄上、」
「わかってるよ、ルシルフル」

 ルシルフル、見事なスルーっぷりだな!
 俺たちが彼らと離れた所に立つと、待ってましたとばかりにローレライからの力が空から降ってきた。

「・・・・ジェイド・カーティス。『この世界』で我々の事を探っても無駄だ。俺たちの世界は本来『こちら』と交わらないはずだった。それが思いもがけず繋がってしまったに過ぎない。」

 おや、ルシルフルにしては珍しい。
 ジェイドの質問に律儀に答えるなんて。

「どういう事です!?」
「そのままだよ。俺の名はルシルフル・・・・ルシルフル・フォン・ファブレ。兄共々世話になった、アスラン・フリングス」

 弟が名乗ったのなら、俺も名乗らないとな!

「俺の名前はルルー。・・・・正式には、ルーク・フォン・ファブレ。本当にありがとう、もう一人のルーク。君と、君の愛する人たちが幸せになれるよう、祈っているよ。」

 さようなら!
 瞬間、世界を白い光が覆う。
 で、再び目を開けると同時に、突然力強い腕に抱きこまれた!

「ほおぇあっ!?」

 しまった! あまりに突然の事に、絶対遵守の男の叫びと被ってしまった。

「ルルー! 無事か!?」

 弟様をワイルド美人にしたような黄金色の眼を持つこの人、正真正銘のローレライ(人型)です!

「お父様! ほら、俺はこの通り無事ですよ」
「本当に済まなかった!」

 ぐりぐりと頬擦りしてくるお父様、ちょっと痛い。首がもげる!
 と思ったらべりっと剥がされた。
 グッジョブ弟様! その不機嫌全開の笑顔が怖いけど、助かったよ!

「ルシルフルも済まなかったな!」

 しかも弟様が文句を言う前に、お父様はルシルフルに抱きついて俺と同じように頬擦りする。
 不機嫌全開のルシルフルにそんな対応・・・・お父様、強いな!

「ちょ、こらっ! もうわかったから離せ!!」

 うん、あっちはあっちで楽しかったけど、やっぱりこの世界がしっくりくる。
 いや〜しかし、ルシルフルをこんなに焦らせる事ができるなんてお父様ぐらいだよな!

「ルルーもおいで。」

 俺が返事をする前に再びお父様に捕まりました!
 俺も捕まっちゃって観念したのか、ルシルフルも大人しくなったし。

「其方たちが無事で本当に良かった!」

 仕方ないのでお父様の気が済むまで、二人揃って抱かれてたのでした! まる!


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