超振動って上手く制御すれば、どこでもドアみたいにできるんじゃね?
そう考えた俺が馬鹿でした!
中庭で試しに超振動を発動した瞬間、文字通り世界が歪んで俺の意識はホワイトアウト。
意識を失う瞬間、ルシルフルが焦って俺に手を伸ばしてるのが見えたんだけど・・・・・・・あれー?
俺、超振動の発動に失敗したか?
譜術は得意だと思ってたのに、ちょっとショックだ!
で、目が覚めたら何故かティアやガイ、ジェイドにナタリア、アニスと・・・イオンに囲まれていた。
しかも厳しい顔つきで。
何で俺原作メンバーに囲まれてるの!?
あれ? 本編まだ始まってなかったよね!?
「アンタが総長に唆された所為で、みんな死んじゃった!」
総長ってあの髭の事だよな?
今まで一度も会った事ありませんけど、アニスさーん。
「僕が迂闊でした。ヴァンがあんなことをさせようとしていたなんて・・・・」
いや、イオン。
そんな悲しそうに言われても、俺さっぱりわかんないから!
「お、俺が何したって言うんだよ!?」
「・・・・・呆れた。貴方、自分が何したか理解してないの!?」
は?
何故ティアにいきなり怒られる!?
「貴方は兄に騙されたのよ」
え、会ってもいないのにいつ騙されたんですかね、俺!
「ブリッジに戻ります。ここにいると馬鹿な発言に苛々させられる。」
うわっ、さすが陰険鬼畜眼鏡! 超蔑んだ目で見られた。
「変わってしまいましたのね。記憶を失ってからの貴方は、まるで別人ですわ・・・・」
そりゃー、アッシュとは別人ですから!
「サイッテー!」
「ルーク、僕は・・・・」
「イオン様、そんな奴放っといて行きましょ!」
ロリっ娘に罵られた!
でも俺罵られて感じるタイプじゃないんだな、これが。
「ルーク、あまり幻滅させないでくれ・・・・」
幻滅って・・・・・あれ?
気づくの遅かったけど、このイベントってもしかしてアクゼリュス崩落の時のか?
超振動の発動に失敗してタイムスリップしちまったとか、そんな展開なのかコレは。
「少しは良い所があると思ってたのに・・・・私が馬鹿だった。」
そしてティアまでも踵を返し、俺の前から去って行った・・・・・のはいいんだけど、ここホントに魔界?
よっこらせと気合を入れて身体を起こせば、障気に満ちた空気と汚染された泥の海、鳴り止まない雷と紫色の空が見えた。
わー・・・、マジモンの魔界だ。
どうでもいいけど、空気が重い。身体反応もいつもより更に鈍いし。
呼吸をする毎に体が軋む感じがするし、頭痛も止まらない。
うあー・・・もしかして障気の影響?
ゲームだと結構ルーク平気そうにしてたのに、俺こんな所で死にたくないし。
・・・・・・・・家に帰りたいな。
パパンとママン、弟様がいるお家に。
はぁ、俺何で安易に超振動を試しちゃったかな?
もう一度超振動を発動すれば戻れるかもしれないけど、本当に戻れるかわからない。今度は別次元だったりするかもしれないし。
ゲームのルークも制御には苦労してたみたいだし、そう簡単に上手く行かないってことだ。
・・・・・・・・どうしよう。
とにかく、タルタロスに行こう。
ユリアシティに行けば、体調少しは良くなるかな?
重い身体を引き摺ってタルタロスに乗り込んだ直後、戦艦はすぐに動き始めた。
できれば部屋に戻って休みたいところだけど、・・・・・・・俺の部屋どこ?
タルタロスの構造なんて、俺まだ知らないよ!
結局ユリアシティに到着するまで、廊下に座ってたんだけど、体調悪化したっぽい。
目の前がぐらぐらする〜。
今食い物見たら、絶対吐く自信がある!
ユリアシティに到着してタルタロスを降りる仲間たちは、ハッチ近くで座り込む俺を一瞥もしやがらなかったし。
くそぅ、俺の繊細なガラスハートにヒビが入っただろうが!
本当は動きたくなかったけど、一人ぼっちもなんだから頑張って降りてみたよ。
で、すっかり忘れてましたユリアシティでのアッシュ襲撃イベント。
迫り来る銀色の刃に、俺は当然動けない。
もしかしてここで死ぬのか・・・・・?
迫り来る死に怯える俺に反応したのか、自動で羽衣が俺を守ってくれたんだけど、正直、俺は限界・・・・。
身体が不調を訴えて、立ってられなかったんだ。
倒れこむ俺に再び迫り来るアッシュの剣に、俺は知らず泣いていた。
・・・・・助けてくれ。
俺は痛いのも苦しいのも嫌いだ。
現代で死んだ時は不思議と痛みは感じなかったけど、刃物は特に痛そうだし。
ルークとなった俺を育ててくれた父上と母上の元に帰れないまま、ルシルフルに会えないまま死ぬのは嫌だ。
嫌なんだ。
嫌なんだよ・・・・。
「ルシ、ルフル・・・・」
思わずルシルフルの名を呟いた直後、羽衣が動く前に剣と剣がぶつかり合う音が間直で響いた。
「兄上!!!」
アッシュの剣を退けて、悲鳴のような声を上げるのは、誰だ?
「兄上、兄上、しっかりして下さい!」
倒れこんでる俺を大切そうに、しっかり抱きこんでくれるこの腕と、俺を心配してくれる涙に滲んだ声の持ち主は・・・・俺がとても良く知ってる人間だ。
・・・・・あぁ、そういえば俺が超振動の発動に失敗した時、あの子は俺に手を伸ばしてくれてたじゃないか。
俺に巻き込まれちゃったんだな。
ルシルフル。
「ルシ、・・・・」
「喋らないで! すぐに助けますからっ」
助けられたよ。
俺、このままお前に会えないまま一人で死んじゃうのかもって思ってたんだもん。
それだけで充分だ。
目の前が霞んで良く見えないけど、俺はなけなしの力を振り絞って手をルシルフルへと差し出せば、すぐに握り返してくれるその力に安堵した。
・・・・・・・もう、大丈夫。
訳も無くそう確信して、俺の意識はそこで途絶えた。
次に目を覚ました時、そこは俺の愛すべき日常に戻っていた。
俺は自分のベッドに眠っていたようで、父上と母上、ルシルフルに見下ろされていた。
「俺・・・・」
「良かった! 気づいたのね、ルルー!」
「良くぞ、無事で戻った。」
良かった、本当に良かったと繰り返し、泣いてしまったママンをパパンが優しく労わっている。
あれ、俺いつの間に戻ったんだろ?
「兄上!!」
・・・・・でも、まあいいか。
戻って来れたのならそれでいい。
顔を涙でグシャグシャにして抱きついてきたルシルフルの体温に安堵して、俺はそっと弟の背に腕を回し宥め続けたのだった。
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