「良くお似合いですよ、兄上」
普段とは違った格好をしている俺を見て、ルシルフルが笑う。
またその笑みが嫌みったらしくない、本当に褒めてくれていると分かるからちょっと照れる。
「ありがとう。ルシルフルこそ、良く似合ってる。・・・・でもそれちょっと動き辛くないか? やっぱり俺がそっちを着た方が良かったんじゃ・・・・」
「いえ、兄上にこの服は似合いませんから」
え゛・・・・!
そ、そうか・・・・俺には似合わないのか、その服。
ちょっとショック・・・・だなんて、そんなことないんだからな!?
「・・・・・何で俺までこんな格好をしなければならないんだ・・・・・」
あ、そういや忘れてた。
アッシュも俺たちに合わせて着替えてたんだっけ。
「兄様も良く似合ってますよ?」
「・・・・ふんっ、当たり前だ」
だよねー!
ルシルフルもアッシュも、元がいいモンなぁ! チクショウ、羨ましいぜ!
俺たち三兄弟は本日、お母様に言われるまま普段着ないようなコスチュームにチェンジをすることになりました!
ゲーム内のコスチュームチェンジかと思いきや、全く別の物だったんだなこれが!
「だって貴方達にこれを着せなさいって、ビビビッて来たんですものv」
で、電波・・・・!?
ものごっつ良い笑顔でそう言い切られたら、息子どもは誰一人として逆らえませんママン!
ということで、今日一日コスチュームチェンジと相成りました!
ちなみに俺の衣装、お母様曰く『G産眼帯黒系スーツ』らしい。
スーツなんて久しぶりだ!
元々高校でブレザー着てたから、何だかこの感じ懐かしいな!
・・・・・まあでも、名前からして分かるように左眼に何故か眼帯をしているんだけれども。
「ルルーの場合はこうよねv」
というお母様の言葉と共に長い髪を緩く編まれ、左肩前に垂らされてる状態です。(しかも三つ編みを留めるのには、黒いリボンと言う徹底振り。・・・・・何かこのリボン一本だけでも凄い高そうな気がするのは、俺の気の所為? 俺が庶民なだけ!?)
ルシルフルの衣装は、『G産執事系スーツ』というらしい。
こっちは比較的アビス世界でも受け入れられ易いんじゃないかな?
何たってラムダスと似た様な衣装だし。
まあ、全体的に黒いけど。
しかもピシッと決まっていて、前衛で戦うルシルフルには動きにくいんじゃないかなぁ? と俺は思ったんだけど、余裕で剣を振り回している。
どんな柔軟性と耐久性だ、執事系スーツ。
あ。
ルシルフルの場合、髪は撫で付けられてて何だかいつもより大人な感じになってるんだ。
ちなみに、さっき俺には似合わないって断言された衣装だぜ!
女の子ってこういうの好きじゃん!? だから俺も着てみようかな・・・なんて思ったのに・・・・・・ルシルフルのばかぁああああ!! うわあぁぁああんっ!
どうせ俺には似合わねーよ!
で、アッシュの衣装は『G産刑事系スーツ』。
・・・・・・・・・うん、何だろう。
この世界じゃこんな服浮くだけだとわかってるのに、浮かないどころかすげぇ似合ってるのは何でなんだろうな!
無造作に後ろで一つに括られている髪(決してポニーテールっていう感じじゃないんだ!)、眉間に寄せられた皺もサングラスに良く似合う。
不機嫌そうに紅茶を飲みながら新聞読んでるなんて、刑事っぽいよな!
紅茶じゃなくてコーヒーなら尚良かったんだろうけど、残念ながらアッシュは紅茶党だ。無い物強請りはしちゃいかん。
しかもサングラスしててホントに見えてんのかって突っ込みたいけど、アッシュなら見えてそうで怖いなぁ・・・・。
現場に出たら、銃撃戦とかやってそうな雰囲気だ!(本物の獲物は剣だけどな!)
・・・・・・・そもそもG産って何?
黒くてGで作った・・・・・なんて、おおおおお母様っ!??
俺の大嫌いな昆虫の事じゃないですよねそうですよね信じてますからねお母様!!
ひぃ・・・っ!
止めよう、これ以上考えるのは止めるんだ俺!
・・・・それにしても。
「俺じゃあ、ルシルフルの衣装はそんなに似合わないかな?」
「似合わんだろう。」
おぅっ!
ルシルフルに続いて、アッシュからも断言されたし!
へへっ、・・・・・いいんだいいんだ俺なんて・・・・・・昔も今も女の子にウケなかったよ。
「そもそもお前は執事と言う柄じゃないだろうが。」
「そうですよ、兄上。兄上の場合、若くして悪の貴族の当主になったとかの方が似合ってます。」
え、それどこのファントム○イヴ家?
「そして俺が兄上の執事です。」
にっこり嬉しそうに笑うのは可愛いんだが、そうするとルシルフル、お前悪魔にならなくちゃいかんだろうが。
主に決め台詞の為に。
「・・・・それよりもお前ら、さっさと座れ。折角の紅茶が冷めるだろうが」
はーい!
お茶会はお菓子も一杯、俺は毎回幸せです!
そんな訳で用意された椅子に近づこうとしたら、あれ? 何かに躓い・・・たッ!?
「兄上!!」
うぉおおっ、危ねぇ!!?
片目眼帯してるから距離感とかわかんないし、見える範囲も狭いしで俺はもう一杯一杯です。
ルシルフルが抱きとめてくれなかったら、俺は今頃庭で顔面ダイブを披露してる所だったよ・・・!
「ルシルフル・・・悪い、助かった」
「いいえ。兄上が無事で良かったです。・・・・でもそうですね・・・・・兄上、そのままでは危ないのでお手をどうぞ」
悪戯を思いついた子供のように目を輝かせたルシルフルが、恭しく俺に手を差し出してくる。
・・・・・全く、衣装にちなんで執事ごっこか?
断って、楽しそうなルシルフルに水を差すことなんか出来るわけも無く、俺は苦笑しながらその手を取った。
「・・・・頼む。」
「かしこまりました、ご主人様(マイロード)」
「・・・・・・・・・・何やってるんだ、お前らは」
アッシュの呆れ顔なんて気にしなーい!
弟様にエスコートされ、俺は無事椅子に座れたし、さあお菓子を食べようと思ったその時。
「ここに居たのか、お前たち」
声はお父様。
まぎれもなくクリムゾンパパン!
なのに、その姿ときたら・・・・!
「ち、父上・・・!?」
アッシュ、お前の焦り具合は良く分かる。
「良くお似合いですね、父上。父上のも母上が?」
ちょ、ルシルフルお前驚かねーの!?
「・・・・あぁ。あれにも困った物だ。」
少しばかり疲れた溜息を吐いたお父様は、まさしく黒い王子様ルック!
あれ、しかもちょっと若返ってないかアンタ!?
「ちなみにシュザンヌ曰く、『G産細剣士な王子ルック』らしい。これを着せる為に、何だか怪しい薬まで飲まされたのだ。」
若返りの薬かよ!?
困ったような笑みを浮かべるお父様(若)は、余裕のある大人の男の色気を振りまいていて・・・・やべぇ、同じ男の俺でもクラッとしちゃうかも・・・・なんてな!
お父様(若)もお茶会に招いて、ドキ☆男だらけのティーパーティーが開催された。
「・・・・・・それにしてもG産とは何なのだ?」
「「「さぁ?」」」
お父様(若)の問いに、結局三兄弟は全員揃って首を傾げたのだった。
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